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ハワイに暮らすひと

サム・チョイ シェフ
「お昼どきに空いているレストランには入るな。 痩せたシェフは信用するな」

 好きなことだけをやって一生を終えることができたら、それ以上の幸せはない。ハワイの名シェフ、サム・チョイは、幼少の頃から食べることと料理をすることが好きで、食への情熱を注ぎ続けてきた。彼はアイランド・キュイジーヌの料理スタイルを確立した先駆者であり、ハワイに3軒、グアムと東京に1軒ずつレストランを持つオーナーシェフであり、料理番組のホストであり、レシピ本やオリジナルブランドのドレッシング、冷凍食品も展開するビジネスマンでもある。好きな道で成功しているサム・チョイの幸福な人生は、両親の愛情と自然があふれるオアフ島ノースショア、ライエという小さな町から始まった。

「10歳頃には野菜を洗って切って、一通り料理の準備をしていたんだよ」
 サムの父親はライエで小さな食料品店を経営し、店の一角でロコモコやフライドライスなどのローカルフードを出していた。父親は素材を丁寧に扱うこと、形や大きさを揃えて切ること、そしてキッチンをいつもピカピカに磨き上げることをサムに教えたという。ハワイではお祝い事のたび宴会ルアウを催し、ご馳走を振る舞う。カルアポークやロミロミサーモン、ラウラウなどハワイ伝統のメニューを大量に用意する父を手伝いながら、料理が人を幸せにする現場に立ち会ってきた。そんな料理の才能に秀でたサムをワンステップ引き上げたのが母だった。

「一人前の料理人になるためには教育が必要だと、母は州立カピオラニ短大入学の手続きをしてくれた。そのことに、今本当に感謝しているんだ」
 短大では専門の料理だけでなく、栄養学や科学、文学など一般教養のクラスも受けなければならない。それらをしっかり修めたことが、彼の幅広い活動の基本になっている。現在は母校のカピオラニ短大で講師も務め、後進の育成にも余念がない。

 短大を卒業して各ホテルで修行を積んだ後、1981年にハワイ島に最初のレストランをオープン。地元で獲れる新鮮な魚や野菜を使い、多様な文化のエッセンスを融合したスタイルが広く受け入れられ、アイランド・キュイジーヌは一世を風靡した。サムの料理は大きな皿にたっぷりの量が美しく盛られ、テーブルに運ばれてくる瞬間は誰もが喜びの表情を隠し得ない。おいしいと評判のロコモコは、ハンバーグとグレービーソース、とろりと流れ出る黄味の加減がパーフェクトな目玉焼きまですべてが絶妙のバランス。レストランメニューに彼が初めて加えたと言われているフライド・ポケは、たたきのようにさっと表面をあぶったマグロにしっかりと味つけがされて、添えられた白いごはんが進む。どちらも日本人の舌には完璧にマッチして、ひと口食べるとハッピーな気分になる。
  それもそのはず、サムは「日本食は美味しいね。日本に行くたび、寿司からラーメンまでいろいろなものをお腹いっぱい食べてくるんだ。接客も超一流だし学ぶことは多いよ」と、大の日本びいき。どの土地に行っても美味しいものを探して歩き回るらしい。

 美味しい店かどうかを見分けるコツは、チャイニーズ系のほっそりした父親が残した名言がある。


「お昼どきに空いているようなレストランに入っちゃダメだ。ろくなものが出てこないからね。それから痩せているシェフの作る料理なんか信用するな」
 
 アロハの心がぎっしり詰まったふくよかな体つきのサム・チョイは、父の言葉を唱え、いたずらっぽく微笑んだ。


【写真上】笑顔が素敵なサム・チョイ
【写真中】最新刊レシピ本「Alohacuisine アロハキュイジーヌ」$24.95
【写真下】ハワイ滞在中に試したいロコモコ

Sam Choy's Diamond Head Restaurant
449 Kapahulu Ave., 2nd Floor ・ TEL 732-8645
Sam Choy's Breakfast, Lunch, Crab & Big Aloha Brewery
580 N. Nimitz Highway ・ TEL 545-7979
http://www.samchoy.com

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