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アウトリガーカヌーレースに出るためには、泳げることが第一の条件。理由その1. カヌーがひっくり返ったとき、海に放り出されてもパニクらず、カヌーを元に戻して漕ぎ出さなくてはいけないから。理由その2. 長距離レースではウォーターチェンジが必要だから。その「ウォーターチェンジ」とはこんなこと。 6人乗りアウトリガーカヌーでレースをする場合、短距離ならスタートもゴールも同じ6名で漕ぐのだが、30キロ以上の長距離レースだと、女子の場合は基本的に10名が交代しながら漕ぐ。伴走船には交代する4名が乗り込み、一回に2〜3名ずつ交代する。さて、どうやって交代するか。伴走船がカヌーより300メートルほど先回りして、交代する3名を海に落とす。海に入った3名は立ち泳ぎをしながら片手をあげてカヌーを待つ。カヌーと待ち人が交差するギリギリのところでカヌーを漕いでいたクルーのうち3名がカヌーの右側の海に飛び込み、海からは左側から乗り込む。乗り込むや否や、全力で漕ぎ出す。海に飛び込んだ人は伴走船に拾い上げてもらう。これがウォーターチェンジ。長いレースだと、10回くらいこれを繰り返す。 私ははっきり言って、このウォーターチェンジが嫌い。練習で幾度も海に落とされて、カヌーに這い上がらされて、漕いだと思ったらまたチェンジさせられて。水中でカヌーを待っている間、潮の流れが強いとあっちこっちに流される。波が高いと近づいてくるカヌーの姿が上下に見え隠れする。失敗したらどうしようと不安がつのる。そんなこんなを繰り返すウォーターチェンジの練習は今でもやっぱりすごく嫌い。 ところがレースになるとちょっと違う。火事場のなんとかとは良く言ったもので、いくら練習でウォーターチェンジをミスしても本番では集中力のせいか、驚くほどうまくいく。失敗したら仲間に迷惑をかけるから、というプレッシャーもあるし。その上、長いレース中は交代がありがたい。30分、40分と漕いでいると疲れるし、のどは乾くし、早く伴走船に返ってあれを食べよう、とか右肩をマッサージしよう、とか考えることしきりだ。 食べたいものへの期待のせいなのかどうか、交代するために「ドボン!」と音を立ててカヌーから海に飛び込む瞬間が私は大好き。水上から水中へ、カラフルに彩られた景色が一転、青一色の世界に変わる。競争心で熱くなっていた頭は、じゅっという音が聞こえてきそうなくらい一気にしずまる。母なる海に抱かれながら、「このまま魚になりたい」なんて突飛なことを考える瞬間もまた私は好きだ。魚よりはせめてイルカ、クジラもいいな、と思いがふくらむまでにはたいてい伴走船がそこまで来ているのだけれど。
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