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私のカヌークラブ・コーチは今年9月のモロカイレースでも2位にくい込んだ現役のトップ・パドラーであり、Kai Makana (カイ・マカナ“海からの贈り物”)という非営利環境保護団体の代表を務める人物である。本職も国家レベルの環境保護ならプライベートでも環境問題に取り組む、正真正銘、筋金入りの環境活動家だ。カヌーを漕いでいるときは、練習、レースに関わらず海に浮かぶゴミを拾ってくる。そんな彼女がカヌー・コーチをすることと引き換えに、クラブとしてはカイ・マカナの抱えるプロジェクトを手伝うことが義務づけられた。そのプロジェクトとは、モカウエアという、地図にも載らない小さな島を復旧することだ。 10エーカー足らずのモカウエア島は、ホノルル空港近くのサンド・アイランドの先に在る。雑木林に覆われ、流れ着くゴミがたまる一方の島では、かつてハワイアンが養魚池で魚と海藻を獲りタロ芋を育てて自給自足の生活を営んでいた。カイ・マカナのプロジェクトの目的とは、島の池に再び魚が戻るよう、エコシステムを取り戻すこと。島のゴミを集め、池を浸食している外来種の海藻や、繁殖力の強いキアヴェやマングローブを取り除く作業は、主にボランティアの小中学生が行う。キアヴェの枝は太く鋭いトゲだらけで、安物のゴムゾーリなんか簡単に突き抜けて足の裏に突き刺さる非常に危険な存在である。マングローブは挿し木にせずとも、枝になる実が地面に落ちただけで次々に根を張る頑固ものだ。少なくとも池の周りだけでもこれらを取り除き、安全に歩き回れるようにしなければならない。 私たちカヌークラブはというと、ボランティアの子どもたちをカヌーに乗せて、サンド・アイランドからモカウエア島まで運ぶ、いわば渡し船の役を務める。しかしただ乗せるだけでなく、子どもたちにもカヌーの漕ぎ方を教える。何度言っても反対に漕ぐ子や、ひと呼吸遅れる子、かけ声だけが一人前の子たちばかりでも、回を重ねるごとに子どもたちのカヌーを漕ぐ姿は様になってきて、それと比例してモカウエア島内の整備は徐々に進んでくる。私は一人の漕ぎ手として、距離にして2キロもない島と島の間を幾度も往復しながら、今日の競技ではない、昔日のカヌーが人間に果たした役割をぼおーっと考えてみる。また島の真ん中に横たわる、1800年代に建造されたカヌーがさらなるノスタルジーをかき立ててくれる。あちこちひび割れたカヌーに耳を傾けると、漁や旅に出ては島の生活を支えていた日々の物語が聞こえてきそうだ。 このプロジェクトのゴールの一つは、ボランティアの子どもたち専用のカヌーを所有することだ。クラブからカヌーを借りずとも、私たち漕ぎ手がいなくとも、自分たちだけでモカウエア島にいつでも自由に行き来し、失った過去を取り戻すことができるように。なぜなら、モカウエアが失った生活こそ“海からの贈り物”であったに違いないから。ざらついた古いカヌーの表面を手のひらで触りながら、そんなことを思った。 ※カイ・マカナの詳細はホームページを参照下さい。
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