
Girls canoe racing at Keehi Lagoon |
私がアウトリガーカヌーを始めたきっかけは、ロコガールの友人に勧められたから。出産、育児で忙しかった彼女としばらく疎遠になって、たぶん一年くらいたったある日、たまたま我々は再会した。フィットするジーンズに合わせたビビッドカラーのタンクトップから伸びる腕は引き締まり、こんがりと陽にやけた頬には多少のそばかすが散らばっているけれど、全身からあふれるようなエネルギーと美しさをびんびんと放っている。服のサイズが戻っただけではない、えも言われぬ健康美に一瞬でノックアウトされた私は、それがカヌーパドリングによってもたらされたと聞くやいなや、彼女が通うカヌークラブの門を叩いた。
初めてカヌーを漕いだ日に、私はいっぺんにカヌーが好きになった。前に座った人と同じタイミングでパドルを水中に突きさし、腰のあたりまでぐいっと引き上げてはまた突きさす。上半身だけの運動に見えるけど、手や腕だけで漕ぐことはできない。肝心なのは下半身の支えによる。これは野球のバッティングやテニスなんかと同じことで、重心移動というものが大切なスポーツなのだ。全身を使うスポーツとしてのカヌーパドリングは、ウェストから下半身が気になる女性にはパーフェクトなエクササイズだと、実際体験した時私は理解した。三ヵ月後の自分を想像し、ひとりでにんまりとした。
ハワイでのんびり暮らすことに慣れていた私に、カヌーはフレッシュな空気を吹き込んでくれた。パドリングのテクニックについてひとつずつ新しいことを覚える喜び、新しい友達を作る喜び、レースで勝つ新鮮な喜びを味わいながら、あっという間に五ヶ月ほどのカヌーシーズンは終わる。はたして私は理想の体型、輝くような健康美を手に入れたのか。くやしいことに、1グラムだって体重は減らなかった。肩には筋肉がついた気もするし、それが証拠にジャケットが窮屈になったよう。
そんなシーズンを繰り返し、今年に入ってなぜかこう言われる。「あら、やせた?」いいえ、やせてないんだけど。悪い気はしないが、真実は違う。ちょっとばかり肩を痛めて今はまったくカヌーを漕いでいない。きっと使い込んでいた筋肉が落ちたから言われる言葉なのだろう。早くカヌーを再開したい気持ちが急にわきでてくる。やせたと言われなくてもいい。たくさん運動して思いっきり食べて、筋肉モリモリになっても、こんがり焼けた肌の色が見た目には引き締め効果を発揮してくれるはず。そう思って、私は再びにんまりしている。
この春、私の周りの大切なひとたちが、どんどんと新しいスタートを切っている。新しい仕事、新しい人間関係、新しい土地で、未知だった一歩を踏み出している。なんとか肩が治った私も、海に入らなかったこの何ヶ月間を早く取り戻さなくては。新しいシーズンはまもなく始まる。
文と写真:澄水ゆかし
【プロフィール】
短距離から長距離はモロカイレース「ナ・ワヒネ・オケカイ」を完漕する、カママラホエ・カヌークラブ所属の自称“カヌーガール”。共著に双葉社発行『ハッピーグルメハワイ』『ハッピーハッピーハワイ』他。 |
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