トップページ 楽しむ 食べる・飲む ライフスタイル ショッピング 美容・健康 ドライブ 最新情報・読み物




第4話:恋する季節


 ハワイのカヌーパドラーにとって待ちに待った季節がやって来た。夏、カヌーシーズンの到来である。5月の終わりから10週間に渡って繰り広げられるレガッタレースのあと、ハワイ各島で長距離レースが開催され、最も過酷なモロカイレースが行われる10月を最後にシーズンの幕を閉じる。華々しいハレの瞬間が連続するわくわく楽しい季節、それが我々の夏だ。しかし、シーズン中は勝負に熱くなるだけではなく、どうやらハートにも火が灯るらしい。シーズンが終わるころ、ひとつ、またひとつと、カヌークラブ内にカップルが誕生するのだ。

 毎週島のあちこちで開催されるレースに出場する我々には、様々な共同作業が待っている。陽射しを避けるためのテント張りから撤収、カヌーの運搬、クラブメンバーの応援やバーベキューなど、行動を共にする時間が増えるレース期間中に男女が仲良くなるのはごく自然のこと。ハレイワやマイリビーチでのレース前夜からキャンプをした週をはさんで、いつの間にやら友達から発展してキスし合うカップルの姿を見るのはなんとも微笑ましく、またうらやましい。

  既婚者である私は、そうやって愛を育んでいくカップルを見守るのが普通なのだろうが、今期に限ってはマッチメイキングに燃えている。以前メールで「マッチメイキング」と書いたら「ラブメイキング」と勘違いした友人がいたので念のため断っておくが、マッチメイキングとは恋人募集中の男女の出会いを助け、縁談をお世話するようなもの。昔はどこの町内にもいた、見合い写真を配って歩くおせっかいなおばちゃん役、これがマッチメイカー、私である。

  恋愛というものは、結局は当事者次第ではあるけれど、誘おうか、誘わぬべきかとためらいがちな背中をほんの少し後ろから押すことや、白黒はっきりしない心の中を本人に代わって確認また必要であれば伝達してあげることが、二人にとっての大きな一歩になることだってある、というのが私の持論である。このあまり裏付けのない思い込みによって、マッチさせられたのは同じカヌークラブに所属しているちょっぴりシャイな日本人女性。海が好きな彼女には、海を愛するカヌーパドラーがいいと、クラブ内の男性で「これは」と思う人とデートの場をセッティング。初デート後の印象を双方から聞き出し、相談に乗ったりするのもなんだか“恋愛の達人”に自分がなったようで喜ばしい。勝利の興奮と敗北の辛苦を共に経験するこのシーズン中に、彼らのハートの片隅にでも火が点けばいいな、と心から願った。

  しかし、第三者が思うようには運ばないのが恋愛というものだ。シーズン半ばにしてマッチメイキングは2度も失敗、クラブ内で二人もの男性とゴシップにでもなれば、彼女の立場もなくなるということで、マッチメイキングは自粛せざるを得なくなった。

  ところが先日のレースの合間のことだ。マッチメイキングの失敗談をカヌークラブのある女性に打ち明けていたら彼女に独身の義弟がいるという。安定した仕事を持ち、陸と海のスポーツに長ける上に、彼女の家族であればきっと人柄もいいに違いない。何より、彼は別のカヌークラブに属しているので噂を心配することもない。この際マッチメイカーの座は彼女に譲って、陰で応援することにしよう。シーズンが終わるまでに恋が生まれるよう、そっと祈りながら。

文と写真:澄水ゆかし
【プロフィール】
短距離から長距離は65kmのモロカイレース「ナ・ワヒネ・オケカイ」を競漕する、カママラホエ・カヌークラブ所属の自称“カヌーガール”。共著に双葉社発行『ハッピーグルメハワイ』『ハッピーハッピーハワイ』他。

「カヌーガールのトークストーリー」バックナンバー

※掲載されている写真の無断転載は一切お断りします。



「ハワイアイ」について広告掲載のお問い合わせ会社概要
About Hawaii-AiAdvertising InquiriesCompany Profile
Copyright© 2007-2008 iD8 Publishing All rights reserved