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日本でヨットを持っている人というのはおおよそ金持ちに限られるように、ハワイでもセイリングを趣味とするのはたいていが裕福なひとたちだ。自分勝手なイメージでいうと、「ラルフ・ローレン」のポロシャツを着て、白のコットンショーツをはき、足もとは「ロングス・ドラックス」で売っている黒のビーサンではなく白のデッキシューズ、そして飲み物はシャンペンというようなひとたちだ。しかし、葉山とも逗子とも全く縁のなかった私でも、ハワイに住んでいるおかげで、海のそばというアクセスの利便性から、またマリンスポーツ人口の絶対数も多いという強みから、機会は近くに転がっていて、先日私はセイリング・ボート・レースに参加した。高級感が漂う言葉、セイリングの初体験だ。 「レースとは言っても半分パーティーみたいなものだから、ビールだけ持ってきて」と誘ってくれた友人に言われ、銘柄を考えた末「ハイネケン」を持参。曇りがちな夕刻時、セイリング・ボートは12人のクルーを乗せハーバーを後にした。マストの近くでセイルを上げたり、舵を取るひとたちの動きをながめながら、私はビール片手に船尾にこしかけて、同乗の友人にいろいろと基本事項を質問する。セイリングとは、セイル(帆)に風を受けて進むことで、一概にヨット、あるいはセイリング・ボートと呼んでいる船舶にはそれぞれ一人乗りから10名以上乗る大型まで種類はたくさんあるらしい。前後2枚のセイルは飛行機の両翼のように、風に向かったり受けたりする角度を調節しながら進むとか、物理系の話を聞いていると、舵取りが右へ左へと重心移動の指示をクルーに与える。かなりの角度で傾くボート上で、ビールとカメラを海に落とさないよう、私は必死でボートにしがみついた。ヨットというと、帆が垂直に空に向かってのびている図を想像するが、今回のセイリングでは、のんびりフラットにクルーズしているよりも、右か左に傾いている時間の方が長かったのではないだろうか。それゆえ、楽しさは倍増したけれど。 レースといってもハーバー横の椰子の木をスタートして数マイル先のブイを回って返ってくるという、勝ったのか負けたのかまったくわからないレースだったが、風を利用して帆走するという理論に触れたことは勉強になった。高級なヨットに今後何回乗ることがあるのかわからないけれど、聞き流した風の力学をいずれは理解し、船を操縦する方法を学べたらすてきだと思う。 私が日々漕いでいるカヌーは、スポーツとして漕ぐタイプのカヌーだが、かつて、ポリネシアの人々があちこちの島を旅した航海カヌーには、もちろんセイルがついていた。船体が二つ並んだ双銅式カヌーに二枚のセイルが張られていた。デザインやマテリアルは違うけれど、西洋で発達した帆船と、風を利用して動く原理は同じだ。戦では最大の武器として使われたし、どちらも未だ見ぬ陸地を求めて、長い航海を人間と共にした。 セイリングに誘ってくれた友人は、毎週金曜の夕方はセイリングを楽しみ、週に三回は私と一緒にカヌーを漕いでいる。海を通して広がる世界を、ハワイは教えてくれる。
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