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幸福のメール

毎日の仕事の中で、かなりの時間を割かなければならないメールの整理。ジャンクメールやダイレクトメールなどが日に日に増え、労力は増すばかり。また社内での連絡なども、以前なら口頭で伝え合ったものが今ではメールが主流。記録が残って便利という面はもちろんあるが、時間のズレやニュアンスの捉え方の違いなどで、ミスコミュニケーションやトラブルの原因になることもまれではない。

 

日本同様、アメリカでもエモティコン(emoticon・エモーション+アイコン)と呼ばれる絵文字を使って、雰囲気を和らげたりするが、職場のメール全てに絵文字を使う訳にもいかない。さらに多くのアメリカ人は、日本のように前置きなどを長々と書くことを好まないので、日本人の私にとっては「ぶっきらぼう」ともいえるようなメールを受け取ることが多く、慣れるまでは戸惑うことも多かった。溜まっていたメールの整理を半ばうんざりしながらしていたある朝、スタッフの一人から一通のメールを受け取った。

 

開いてみると、そこには英語がズラリ。「う、これを読むの?」と、一瞬躊躇したが、文頭にあったのは、「いい話だから、みんなに送ります」の一文。ロコの彼曰く、“ショート”ストーリーだったが、私から見るとかなりの量。それでも、わざわざみんなに転送までしたという「いい話」に興味を惹かれ、仕事の合間に読み出してみた。

 

内容は、作者である男性とその両親の思い出。100歳にも手が届く大往生をした両親の、ユニークな長生きの秘訣がいきいきと描かれていた。英語もそれほど難しいものではなく、それどころか、その場面を頭に思い描くことができるような文章。お互いを思いやる登場人物がユーモラスに、そして鮮やかに描写されていて、フワッと心の力が抜けるような感覚を味わうことができた。

 

多分このメールを送った本人は、みんなの心を癒してあげようとか、そんなことは考えていなかったと思う。また、受け取った一人一人が違う受け取り方をしたであろうし、全員が読んだとも思えない。けれども、スピードと利便性を求める一方の現代社会の中で、 固く四角いコンピューターからでも柔らかな人の気持ちを伝えることができると気がつかせてくれた「幸福のメール」を受け取って読むことができたことは、時間に追われて気持ちがささくれていた私にとって、大切な小休止だった。