小さな毛玉ちゃん成長記
ある嵐の日、同居人が濡れねずみで帰ってきた。よく見るとロングス・ドラッグスの紙袋をなぜか大切そうに抱えている。「猫でも拾ってきたのか?」と冗談で聞くと、意外にもその答えは「そうなんだよ」。驚いて袋の中をのぞくと、そこにいたのは手のひらに乗るような大きさの白黒の毛玉のような「生き物」。
まだ歯も生えておらず、後ろ足はまるで魚のヒレのようにだらんとしている。同居人曰く、洪水のような大雨の中、自由猫の母猫がなんとか彼を雨の中から「比較的乾いたところ」へ運んだらしいが、あまりの雨のひどさに母猫も避難せざるを得なかったらしく、この子猫は置き去りにされてしまったそうだ。幸いにも私は、乳飲み子猫を育てた経験が何度かあったので、この子猫はまだミルクが必要だとわかった。
大急ぎで未だ降りしきる雨の中、猫用のミルクを買いにアラモアナのペットショップへ。それからしばらくは、まるで人間の赤ちゃんを育てるように2〜3時間おきの授乳と排泄の世話の日々。そのかいあって彼は今、丈夫な青年猫になりつつある。
この時代、飼い猫となってしまったからには避けられないのが去勢手術。かわいそうだとは思いながらも、先日とうとうマーキングを始めてしまった彼を動物病院へ連れて行く事に決めた。
いくつかの病院に電話で手術の概要を聞いて、一番良さそうだと選んだのが「The Cat Clinic」。そう、猫専門病院である。この病院で患畜は、人間の病院のように個室へ通される。そこでまず看護士さんが既往症や日頃の様子などを問診し、その後ドクターが診察に来るシステムだった。ドクターも看護士さんも、こちらの質問に丁寧に答えてくれるので(猫はともかく)人間はとても安心できた。いろいろと相談した結果、手術の他に白血病などの血液検査とマイクロチップを入れてもらう事に。
動物保護が日本よりも進んでいるアメリカでは、ペット用マイクロチップの使用はそれほど珍しい事ではない。米粒ほどの大きさのチップを肩甲骨の間辺りの皮下に埋め込むというので一瞬躊躇はしたが、万が一迷子になった時などには愛護団体経由で飼い主に連絡が入るので、飼い主の元に戻れる可能性が格段に高くなる。
実際、何匹もの犬や猫がこのシステムのおかげで飼い主の元に戻っているので、相対的に見れば良い選択であろう。その上、このチップを入れるのにかかった費用はわずか$10。これなら大抵の人が払える金額である。
日本人も多く、また多様なアジアの文化も身近にあるハワイに暮らしていると忘れてしまいがちだが、ペットに対する考え方の違いを通して、ここはやはりアメリカなのだなあ、と妙に実感してしまった。



